志水会計 経営方針


経営計画書

(令和四年9月制定)


見るところ花にあらずということなし、

おもうところ句にあらざるなし(芭蕉)

森羅万象は、常に、悟りの姿である。つまり、『これでいいのだ』。

だから

人生は、心一つの置きどころ。

求むる所

Ⅰ 職員の幸福

Ⅱ お客様と事務所の発展

Ⅲ 強い日本の実現

 

 

 

そのためにやること

①経理・税務・経営・PCに関する専門家プロ集団となります

②健全経営により、独立した公正な立場を堅持します。

③申告納税制度と租税正義の理念を実現します。

④お客様の利便を図り、信頼にこたえます。

⑤環境整備日本一の事務所にします。

 

 

1.経理・税務・経営・PCに関する専門家プロ集団となります

 

1)経理の専門家になるために

 

経理の仕事は単純・繰返し作業が多いことが最大の特徴である。経理のプロになるコツはこの特徴を上手に利用することである。つまり、単純・繰返しの単純作業は、誰でも出来るようなエラー・プルーフ作業(原則作業)にカイゼンして、それ以外の仕事を複雑・変化作業(例外作業)として区分することである。つまり、エラー・プルーフ作業はシステム化し、例外作業は変化点を管理できるようにカイゼンすることが重要である。

 

エラー・プルーフの例:アクセルを踏むときはブレーキを踏めない。

 

2)税務の専門家になるために

 

鳥飼重和弁護士は、アメリカで一番経済的価値の高い弁護士はタックスロイヤーであり、日本もそうなると語っています。そして、松沢智教授は「税理士よ、法律家たれ」と述べ、今後、税法が価値の高い仕事になると指摘しています。肌感覚として、税法がここまで複雑難解になると、限られた専門家にしか理解できないものになり、希少価値になる可能性を感じます。

税法を書く人はまず図表にしてから、それを文章にしているそうです。だから、その反対に、税法を図表にしながら解釈すると理解が容易になります。このためには国語の力が必要です。①いつ、②どこで、③だれが、④だれに、⑤なにを、⑥なぜ、⑦どのように、⑧どうしたかを明確に把握する訓練、すなわち、一に国語、二に国語、三、四がなくて、五に算数の学習が必要となります。

 

3)経営の専門家になるために

 

当然のことであるが、経営を行うのは、顧問先の社長です。そこで、私たちは社長の質問を正確に理解することからはじめる必要があります。社長の言葉を本質の部分で理解できたなら、既に問題は解決できていることも多い。そして、理解できたら解答を探す努力をする。この努力は広範に渡り、心理学、会計学、財政学、マクロ経済学、ミクロ経済学、マーケティング、金融論、民法、数学、会社法、文学、歴史、社会学、宗教、・・等々の領域にまたがる。当然、会計事務所のコンサルだから会計学、税法、社会保険、労働法、登記法はバックグラウンドとして必要となることはいうまでもない。全てを習得することは不可能だが、努力すること。有名なコンサルタントであるドラッカーは「コンサルタントのレベルは、その移動距離と経験年数による」と言っています。つまり、経営の専門家になるためには、常に現場を見て、常に学習をしていることを前提にしても、何十年も要するということである。

 

4PCに関する専門家になるために

 

 中小企業白書によれば、中手企業のITに関する相談相手は、「ITメーカー販売会社」が約40%、「税理士」が25%となっています。つまり、私たちはPCに関する専門家としても期待されています。この期待に応えるため、全職員に、2台のデスクトップのあるパソコン、広い作業領域、汎用性のあるアプリケーション(エクセル、ワード、JDL、リレーショナルデータベース)を整備します。これは、お客様からのPCに関する質問に全職員が即座に答えられるようにし、退職した後も社会の役に立てる人財に成長するためです。PCのスキルは「読み書き」と同様で、それを持たないと「文盲」いうことになり恥ずべき事となる時代です。

 

5)まとめ

 

上記のような専門家になることは、広範に渡る学習が必要で、努力の割には報われず、割に合わないかもしれません。福沢諭吉は明治の初め「天は人の上に人を造らず。人の下に人を造らず」と啓蒙しました。しかし、一方で、「学問を勤めて物事をよく知る者は貴人となり富人となり、無学なる者は貧人となり下人となる」とも述べています。割に合うかどうかは天に任せて、まず、学ぶことから始めましょう。福沢の同時代の渋沢栄一は、「富をなす根源は何かと言えば、仁義道徳」であるといっています。

 

一般的な商売では、販売したら商品は無くなるが、私たちの業界では販売しても商品は無くならない。それどころか、販売すればするほど商品が増える。何故か。新しいことを理解すればその分業務知識は「横に」増える。一方、論理的理解力も深まり、「縦に」深まるのである。つまり、新しいことを理解すると、縦・横が2倍になり、4倍に能力が広がるのである。さらに、このように乗数倍的に増加した智慧は時間とともに深層心理に蓄積し、あたかも発酵するが如く、「智慧」に昇華する。智慧者となると不思議なことに、間違えやすいポイントの前で、「オヤ?」と違和感を感じ、運とか巡り合わせがよくなり、「ウマくやれる人=成功体質」となる。

学習の進化とはこのようなもので、だから重要なのである。それゆえ、テーマが浮上したその時、現場で・現実を相手に・現物を教材に、その場にいる全員で、仕事を中断してでも学習を行う。この学習を「いまやれ・ここでやれ・できるまでやれ」研修ということにする。この学習は、対症療法ではなく、根本解決のために行うものである。物事の本質を理解できると、物事を「物語」として論理的に話せるようになる。学習は、自分一人で本質にたどり着くことは凡人には困難である。それゆえ、他者に教わることになるが、その際、教える側は「魚を与えるのでなく、魚の取り方」を教える姿勢が重要である。つまり、教える側が、教わる側の縦と横の両方を高める教え方を工夫することによって、教える側も成長する。

当事務所の職員はこのように訓練された人材であるから、当事務所は可能な限り報われる人事制度を用意します。

 

2.健全経営により、独立した公正な立場を堅持します。

 

税理士事務所は一般の営利企業と比べ、ヨリ独立公正な立場が求められます。福沢諭吉は、一国の独立のためには一身の独立が必要で、一身の独立のためには、まず、自らの経済的な独立を果たす必要があると述べています。つまり、事務所の独立のためには、事務所の経済状態が重要になります。そのためには、過度な投資を控え、資金繰りを安全にし、売上高安全度を高め、一社依存度を下げることです。健全経営による独立した立場を得てはじめて、公正な立場で、税務署にも、お客様にも接することができます。

 

3.申告納税制度と租税正義の理念を大切にします。

 

福沢諭吉は次のように述べ、近代日本の礎を築きました。

 

「人民はすでに一国の家元にて、国を守るための入用を払うは、もとよりその職分なれば、この入用を出だすにつきけっして不平の顔色を見はすべからず」

 

この完成形が申告納税制度といえます。この制度は、納税者自らが、自らの意思で、自らの所得を把握し、自ら税法を解釈し、税額を確定し、納税する方法で、国家は少ないコストで、大勢の国民から税を集めることができます。

しかし、この制度は課税庁にとって都合がいいだけでなく、国民の側からも必要な制度で、福沢諭吉は次のように述べています。

 

「人生の有様は・・思いのほかに事業を遂げざるものなり。この不都合を防ぐの方便はさまざまなれども、人のあまり心づざる一ヶ条あり。・・ゆえにいわく、商売に一大緊要なるは平日の帳合を精密にして、棚卸の期を誤らざるの一事なり」

 

つまり、帳簿への記帳と棚卸が商売の発展のコツである教えているのです。申告納税制度も、帳簿への記帳と棚卸を前提としていますから、この制度は商売の発展にとっても役に立つものといえます。

 

さらに、松沢智教授[1]は次のように述べています。

 

「私は、戦後まもなく家業を継いでいたとき、青色申告者の承認を受けて帳簿をきちっとつけていた。それで当時、税務署から何を聞かれても対応することができた・・憲法の保障を求めるならばその裏付けである帳簿が絶対必要である」

 

そして、刑事訴訟法第323条は、商業帳簿の適時性を求め、次のように規定しています。

 

「書面は、次に掲げるものに限り、これを証拠とすることができる。商業帳簿、航海日誌その他業務の通常の過程において作成された書面」

 

税法は、納税者に納税の義務を課しますが、他方、憲法により制限を受けます。憲法に保護してもらうために、納税者は裏付けとなる記帳を行うべきなのです。しかも、この記帳は、後日アウトソーシングして作成するのはなく、取引の現場で、その時に、自力で、つまり「通常の過程」で、作成しなければいけません。

 自力記帳と申告納税を正しく行っている納税者は、「一国の家元」として真の主権者であり、税務署は手出しができず、「正義は勝つ」のです。当事務所は、お客様を税務署から全面的に守りぬきます。

 

4.お客様の利便を図り、信頼にこたえます。

 

行政は、重複する無駄な手続きや書類を、繰り返し求めてきます。デジタル庁だ、ワンストップだ、ワンスオンリーだなどと言っていますが、全く進捗しません。例えば、社員の採用の際には、雇用契約書、労働条件通知書、労働者名簿、扶養控除申告書等が求められますが、内容の多くが重なっており、無駄な部分が多い。お客様は、これらの行政の無駄を「税理士が無駄な依頼をしてくる」と思っています。だから、私たちは、行政の無駄を対岸の火事とせず、自らの無駄と考えなくてはいけません。つまり、これら無駄な書類を包摂する単一の書類を作成すれば一度の作成で済み、お客様の利便が図れます。

このような不便の積み重なりが、日本の手続きの多さ、行政の肥大化につながり、国民負担として重くのしかかり、日本の停滞の一因、日本の後進国化につながっているのです。

当事務所は、デジタルを利用した独自のやり方で、重複している手続きを、ワンストップ・ワンスオンリー化して、お客様の利便を図り、さらに、プロの専門家集団としてお客様の信頼に応えます。そして、ここで生み出した方法を、機会を捉えて行政に主張していきます。これこそが、当事務所が職業を通じて、日本を強くする方法であると考えます。

 

(クレーム)

私たちがいくらがんばってもクレームが発生することがあります。この場合、第一優先でその間違いを正すと同時に、所長に連絡する。間違いを正すとき、事務所内の他の人にチェックを依頼し、自己のみで解決しない。品質は手順で決まるから、その後、事務所全員で水平展開・垂直展開を行う。

クレームの発生自体の責任は問わないが、所長に報告しなかった責任と水平・垂直展開を怠った責任は問う。クレームとはお客様の指摘により、当事務所の間違いが発覚した場合のその指摘をいい、お客様とは職員以外の全ての利害関係者をいう。

 

5. 環境整備日本一の事務所にします。

 

私たちは万物の霊長として造物主に最も近い場所にいる貴い存在です。つまり、獣とは違うのです。だから、私たちは、万物の霊長に相応しい環境に身を置かなくてはいけません。自分達を最高の環境に置くために、3Sをはじめとする環境整備を行います。そのための、経費と時間は惜しみません。

 

 

 

 

 

 

個別業務方針

 

1、指導業務

 

1)原資証憑の整理・整頓指導

決算書の信憑性を担保するのは外部で作成された証憑証である。建物の土台である。「腐った魚はどんなに上手に料理しても、所詮腐った魚料理に過ぎない」。最も重要な部分である。お客様の経理事務の特性に合わせた整理・整頓の方法を考案し、事務内ではその方法で処理し、顧客訪問や税務調査の際に機会をとらえて指導すること。

 

2)自力記帳指導

隙あらば怠けたがる経理担当者や社長を叱咤激励し、お客様の事業発展のために自力記帳が重要であることを指導する。自力記帳の勧奨は古くて新しい、そして永久に続く長い道程である。記帳方法は原則、エクセル補助簿とし、企業の希望によりJDLを斡旋する。他社システムの場合csv出力(メール)可能が条件。

現在行っている記帳代行は、資証憑から記帳に至るプロセスを学習する経理事務の教材と心得ること。これは、商品として当事務所が提供するものであるから、プロとしてお客様の今後の自力記帳の見本となるように行う。

 

①現金出納帳:「現金その場限り」。毎日記帳、金種表による有り高確認。

②銀行帳:毎月全口座の記帳。通帳を帳簿代用書類とする場合でも、科目印の押印を求めていく。

③売掛・買掛管理表:掛金も在庫も「金」である。重要性を説き、当事務所方式での作成を慫慂する。

④月別給与台帳:年末調整事務を会社で出来ない場合、当事務所で受託し、なるべく対価をいただく。給与計算に付随する社会保険業務も、面倒な連絡業務を省くため、積極的に受託し対価をいただく。

⑤事務所内で領収書の整理をする場合(ダンボール)、原則茶厚紙に添付、零細な顧客の場合茶封筒に月毎にする。いずれにせよ、各顧客ごとに毎年継続(スマホ画像)。

 

3)振替伝票起票:重要な取引が記帳されるので、定型化し、原資証憑を完備し、数字の連続がトレース出来るようにする。企業の経理レベルに応じてどちらが作成してもよいが、当事務所で作成する場合、範囲を明確にする。

 

5)月次試算上の検証と説明および税務・経理についての指導(現場にて):社長・経理担当者に向け、有効な提供資料を選択し、全職員が説明出来るようにする。

 

6)不正防止目的の監査:役員で利害の対立する会社、現金の取り扱いの多い会社、同族以外が経理を担当している会社等、不正防止目的の監査が必要な会社はピックアップし、監査ツールに基づいた監査を行う。監査担当者の力量に依存しない監査ツール(エクセル・ワード・桐)を開発し、利用し、改良していく。

 

2、通常業務

 

1)決算書等の作成:

JDLによる当事務所作成を原則とし、企業の必要に応じ企業独自の帳票に代替する。この場合であっても月次試算表は当事務所で毎月監査し保管しておくこと。税務署が調査に行く必用がないと思い、銀行が社長にいちいち聞かなくても融資できるような、決算書の作成を行う。例えば、チェックリストに準拠し、会計方針・会計方針の変更や、主要な会計処理の方法(手形期ズレ、預金調整等)は明記する。

 

2)申告書等の作成:

①調査時に指摘されそうな点は、証憑書と根拠条文をコピーし、便箋に意見を記入。

②書面添付制度を活用していく。

 

3)付随業務(各種書類の作成):

 

①行政書士業務:

イ 建設業・運輸業:他の行政書士がやっても、照会が当事務所に来てしまうので、積極的に受託し正当な対価をいただく。

ロ 就業規則:働き方改革に伴い、給与計算に就業規則が関係する場面が多くなってきているので、当事務所業務をスムーズに行うために、就業規則の作成を積極的に受託する。

日行連見解:就業規則の作成は「権利義務に関する書類」として行政書士が作成できる。(「自治実務セミナー」2013 7 月号・9 月号)。

 

②司法書士隣接業務:

役員の定時改選の期日管理と議事録作成、司法書士への取り次ぎ業務(関与先が支払う額と同額を支払っているので、関与先レベルの依頼内容で当事務所から遠慮なく司法書士に依頼してよい)

 

③社労務士隣接業務:

給与計算に付随する社会保険業務(東京地裁、令和元年813日判決の範囲内)。この範囲を超える関与先・案件は社会保険労務士へ取次

 

④銀行提出書類作成:

金融監督庁等の信頼性を担保する資料作成を心がける。

 

⑤各種統計資料:

不提出によって対象からはずれるものは不提出。出さなくてはいけないものは、会社がやっても、照会が来るので、受託し対価請求。

 

4)税務調査立会:

お客様にとって税務署は大変怖い存在である。調査はお客様と私たちの仕事の仕方を見直し、改めるための研修の場であるから原則とて所長を含め立ち会う。

 

3、節税・保険提案業務

特別償却等や保険商品等、税法が推奨し、認めた節税は積極的に研究し活用する。しかし、税法を取引や契約形式に影響させるような、税の中立性に違反する税回避取引は推奨しない。

 

4、経営指導業務

多くの経営者は数字を苦手としている。経営数値(絶対値・傾向)を分かりやすく伝えること。この数値の分析に基づいたアドバイスを行うこと。単なる世間話に終始していると、そのうち話し相手にされなくなる。

 

①比較財務資料(引き算)

②年計グラフ(足し算)

③損益分岐点(割り算)

 

5、資産税・認定支援機関業務

当事務所関与先経営者の高齢化や相続税の課税最低限の引き下げにより、資産税関係の相談・申告が増えつつある。「事業承継」については、種類株を利用した持株会社方式によることを原則とし、県の認定は行わない。理由は完全な免税になるまで数十年要する現行制度は実務的に無理があるからである。



[1] 松澤智、法学者、元日本大学法学部教授、元東京地裁判事





剣岳(平成26年9月前剣から)